相続の対象


「財産は残さないつもり」と親が言ったとしても、多少の財産は残るものだ。とりあえず、法的に言うとどんなものが税金の対象になるのか。今のうちに予習をしておこう。
●相続税の対象になる財産
まずは、主に名義を変更する必要があるもの。つまり、不動産、自動車、預貯金、株式や信託の証券、ゴルフ会員権、電話加入権など。そのほかにも、現金や書画骨董、相続人1人あたり500万円を超える死亡保険金や死亡退職金なども含まれる。また、亡くなった親から相続が始まる前の3年以内に子どもに贈与があった場合には、それも相続税の対象になってしまう。

●相続の対象になるみなし相続財産
相続を考えるときには、「みなし相続財産」を含めることもできる。これは生前に親から住宅資金など多額の資金援助をしてもらっていたとか、不動産を子どもの名義にしたといった場合、それも含めたほうが財産を公平に分けられるという配慮からきている。
つまり、長男には生前に200万円をもらっていて次男はもらっていないという場合。遺産が1800万円だとしたら、みなし相続財産200万円をたしたうちの半分の1000万円を母親が、4分の1の500万円を次男が、生前の200万円をひいた300万円を長男が相続することになる。こうすれば、兄弟間のわだかまりもなくなるというわけだ。

●相続税のかからない財産
相続税のかからない財産は、仏壇や仏具、墓地、国や地方公共団体に寄付した財産(相続税の申告期限を過ぎたらダメ)、公益事業用財産など。ただし、残された預貯金で新しく墓地を買う場合、その費用は税金の対象となってしまう。墓地は早めに買っておいたほうが縁起がいいというけれど、実は節税にもなるわけだ。

●放棄する財産
「たいした財産がないから相続税も払わなくて楽だ」と思っていたら、親が知人のローンの保証人になっていて借金が子供に廻ってきたなんてケースもある。借金は相続税の控除の対象にはなるが、支払う義務は親から引き継ぐことになってしまう。しかも、親が死んだ時点ではわからずに、あとから出てくるケースも多いらしい。
そこで、なんとか逃れる方法だが、もらう財産よりも払うほうが多そうな場合は、親の財産を全部放棄すれば借金を払わなくてすむ。親の財産で払える程度ならば、相続した財産の中で借金を支払って、残りを相続するというようにもできる。どちらの方法も、相続することになってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きすること。それを過ぎてから出てきた借金は払わなくてはいけないから、そうなると辛い。まあ、親を信じるしかないのだが。



相続税はどんなもん?


 相続税というと「払うのに住んでいる家を売らなくてはならない」とか「なるべく払わないように早くから名義を書き換えた」といった話を聞くので、一体どのくらいになるのかと心配になってくる。ところが、よほどの資産家でなければそれほど気にすることはないようだ。
 なにしろ相続財産の総額から、基礎控除として、定額の5000万円と、法定相続人1人あたり1000万円を差し引くことができる。さらに、死亡保険金には法定相続人1人あたり5000万円の控除があるし、葬儀費用や借金なども財産の総額から差し引くことができる。亡くなった親と同居していた子どもが引き続き住む場合の居住地にも特例があって、200uまでの部分は、課税対象になるのは2割だけ。
これだけいろいろな控除があれば、我が家は一円も払わなくてもいいという人も多いはずだ。
 また、配偶者や未成年の子どもに対しては生活を保障することが前提なので、配偶者に対してはなんと1億6000万円までは控除されるし、子どもに対しては20歳になるまでは1年に6万円の控除が受けられる、と聞けばさらに安心感は広がったことだろう。
 具体的に、母と子ども2人で不動産も含めて合計1億円を相続する場合で考えてみると、母親は5000万円相続し無税、子どもは1人2500万円の相続で相続税は50万円。1億円相続しても遺族全体の相続税は100万円ですむというわけだ。
 父親についで母親も死亡して子ども2人で相続する場合。これも基礎控除7000万円を差し引くと、1億円相続しても2人で370万円を支払う程度ですむ。
 では、同居していた父母が亡くなってもその家に住み続けられるかだが、たとえば200uの土地の課税評価額(国税庁が決めた路線価などを元に算出)が1億円(1uあたりの評価額50万円)だとしたら、特例を使うとそのうちの2000万円に対して税金が掛かることになる。しかし子どもが1人で相続する場合の基礎控除は6000万円なので、4000万円の預貯金の相続があっても無税ですむ。
 では、200u以上の土地を所有している場合はどのくらいの税金がかかってくるのだろう。たとえば400uで評価額4億円(1uあたりの評価額100万円)の居住地の場合、特例分を差し引いた2億4000万円に税金がかかる。この土地のほかに相続税のかかる財産がなく、子ども1人で相続するとして、その課税対象額は基礎控除を差し引いた1億8000万円で、相続税は6580万円となる。こうなると、預貯金がなければ払いきれない額だ。
 相続税を払う期間は、相続後約10ヶ月以内。もし、一度に払いきれない場合は申請を出せば分割も可能だ。とくに不動産の占める割合が高い場合は、分割の期間を長くしてもらえるし、利子も低くて住むという、うれしい配慮もしてくれている。